週刊少年ジャンプから不良マンガが消えて久しい

※このエントリで言及するのはあくまで「不良マンガ」についてです。実在の不良についてはここでは一切の言及を避けます。

週刊少年ジャンプに、不良マンガの連載は今ありません。「斉木楠雄のΨ難」、「火ノ丸相撲」に元ヤンの脇役はいますが、ヤンキー活動はしていません。「左門くんはサモナー」の脇役にもヤンキーの人間や悪魔がいて、こちらはヤンキーとして活動があるようですが、上記キャラよりも更に出番が少ないです。
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※このキャラは主人公ですが、コスプレです

相撲、バレー、競技ダンス、将棋…部活モノの主人公はみんなグレる暇なんてありません。学業を疎かにしたり徒党を組んで喧嘩したり教師や親に反抗したりしていたら試合に出られなくなってしまうし、補修や説教で練習時間を削られるなんて絶対に避けたい事態です。かつてROOKIES(1998〜2003)の子達が野球に集中できなかったことの反省が現在に生かされているのかもしれません。

ろくでなしBLUCE(1988〜1997)や魁!男塾(1985〜1991)の連載していた頃がWJヤンキー時代だったのかもしれません。
有名な話ですが、スラムダンク(1990〜1996)はスタート時点では不良漫画にもラブコメにも展開できるようにしていたそうで、だから水戸洋平はめちゃくちゃかっこいいし、晴子さんはめちゃくちゃかわいい。結果的にスラムダンクバスケ漫画の代名詞となって、花道は髪を切り、不良仲間はチョイ役に後退しています。
幽☆遊☆白書(1990〜1994)にしても不良キャラとしての要素が残っているのは仙水編(1993)まで、魔界編での幽介は一介の不良ではなく領主の息子として大人達の中で立ち回ります。

最近で長く続いた不良モノでは、べるぜバブ(2009〜2014)があります。赤ちゃんを担いで悪魔の力で戦ったりする不良ですが、主人公の男鹿辰巳は最初から最後までまごうことなく不良少年でした。男鹿をとりまく不良達はきちんと不良らしく校内に勢力を築き、抗争と交渉で牽制しつつ、学校のテッペンを狙っていました。そんな彼らの小競り合いを男鹿はパンチひとつでふっ飛ばします。男鹿は人を人とも思わない不良少年でしたが、徒党を組む必要が無いほど圧倒的に強くて、拾った赤児に対して父性を発揮しているお父さんでした。

ジョジョの主人公を考えると、3部(1989〜1992)・4部(1992〜1995)と改造学ランを着て不良然とした少年が主人公でした。荒木先生も彼らのキャラクター要素に不良があることは明言しています。しかし承太郎がタバコを吸ってお酒を飲んで親に反抗し女子にキャーキャー言われているのに比べ、仗助は髪型こそリーゼント&ポンパドールなもののオシャレで親孝行な少年です。5部(1995〜1999)になると学…ラン…?という服装、そしてギャングです。ジョルノは幼い頃からの憧れ通りにギャングスターとなり、イタリアンマフィアの出世街道をのぼります。ギャングが出てくると不良なんて子供の遊びです。

なぜ今のWJに不良マンガの居場所がないのか、その答えがここにあると私は思います。ジャンプは今や、ヤクザの存在感があまりにも色濃いのです。
ワンピースはしばしば言われるように海賊をモチーフにしたヤクザ漫画ですが、年々ヤクザらしさが前面に出てきています。女は黙って守られていろ的なホモソーシャル、兄弟の契りを交わすための盃、ツリー状の組織構成、ドラッグや武器の売買で儲ける組織と搾取される一般人…
ニセコイの主人公はヤクザの息子です。
銀魂もそもそもの舞台は歌舞伎町です(クライマックスになって歌舞伎町を出てしまいましたが)。
こち亀にも最近レギュラーのヤクザがいます。すごく可愛いです。
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ジャンプは不良を卒業して、ヤクザの支配する世界になったのです。少年漫画のウルトラメジャー・週刊少年ジャンプ、そこは既にヤクザorエリートが真剣勝負をしている修羅の国で、もはや軽犯罪と喧嘩に明け暮れるような不良は道化となりました。
不良がギャグへと追いやられた週刊少年ジャンプを私は毎週楽しく読みます。どこか後ろめたさを感じながら、この平穏を私は愛しています。



ところで、私の友人たちが作っているオリジナル同人誌bnkrR、vol.11のテーマは不良です。本日の文学フリマにてスペースはウ-05。流通センターへお立ち寄りの際は是非ご覧ください。